2014/08/27

2014-08-27:絶対音感

今日は月イチの読書会。
なんだけど、所用で参加できないので、軽く書評だけ。

1998年の小学館ノンフィクション大賞作品。
絶対音感とはなにか、からはじまり、絶対音感を身につけるメソッド、それの日本の音楽教育の歴史のなかでの功罪、そして音楽とはなにか、演奏し人を感動させるとはなにか、ヒトはなぜ音楽が聴覚知覚から情動へつなげられるのか、といった壮大なテーマを、多数の音楽家・科学者へのインタビューをもとに構成した作品。
とにかく、ボリュームがすごい。文庫本で430ページ。よくぞ書き上げた。
巻末に取材協力者一覧があるのだけど、見ててクラクラする(人数もさておき、並んでる名前が。。。)。

とりあげている音楽がクラシックメインなので、そちらに多少の知見があったほうが途中挫折のリスクが下がるかな。作曲家なり曲なり調の話なり。慣れない方にはつらかろうと思う。
日本の音楽教育のところでは、園田高弘の父、清秀の話がアツかった。また自由学園の話がでてきて、おおお、と思ったり。

絶対音感およびヒトがどう音楽を楽しむかを科学からアプローチする部分は、読書難易度的にどうなんだろう。
自分は一応、かつて知覚心理学の研究室に籍があった者なのでふつーに読めはするのだけど、門外の方にどうだったかは伺ってみたいな。
平易に書かれているとは思った。
(自分がやっていたのは視覚なので、聴覚については学部生の講義レベル知識ですけど、読んでていろいろ懐かしかったり)
ただ、この部分は「いまの知見はこんなです」という紹介まで。サイエンスを追及する本じゃないしね(1998年の著作なので、いまは当時より知見が広がっていると思うけど、あんまりそこは重要じゃない)。

著者がこの本で伝えようとするのは「絶対音感がなにか」ではなく、「絶対音感云々のその先」。
本の序盤からちょいちょい登場していた、ヴァイオリニストの五嶋みどりと彼女に英才教育を施した母の節、みどりの異父姉弟の龍と、節の再婚相手の摩承の話が最後の第8章に書かれている。
正直、これまでの流れからは唐突だし、長いし、ナニコレという章なんだけど、絶対音感のない苦労から娘には持たせようと願った母と、逆に持つことでの苦労も味わった娘、その成長過程と親離れ子離れの葛藤、音楽で人を楽しませる・本人が幸せになることは絶対音感のありなしでは決してないことが書かれている。

自分は絶対音感を持っていないので、持つ人にあこがれはあります。
ただ、この作品で「持ってる人の苦労もヤだな」と思うし、「平均律ばりばりな音感も厳しかろう」と思ったり。
自分の経験楽器はピアノと木管で、弦や金管みたいに自分で音を定義する楽器は経験がない。でもキー押さえれば音が出てくれるから、それでいいや。
とはいえ、こどもできたら一音会に通わせてみたいと思っていたりもするんだけどね。^^;
近いし。

本の出来としては、目次にもっと努力を、と思う。この章立てが最適解だとはとても思えない。
もちろん、この膨大な量をここまでまとめたのもすごいんだけど、だからこそもったいないかな。
もっと読者へのいい誘導を出来たと思う。

音楽好き、クラシック好きは読んでおいて損のない本。勉強になります。
ただ、読むの大変なので、がんばってください。