2015/01/17

2015-01-17:七拾七年会公演・夜討曽我・花子・石橋

20150117_77七拾七年会の特別講演@観世能楽堂。
観世能楽堂は3月までなので、七拾七年会としては最後となる公演。
夫婦でお出掛け。自分だけ和装。

今日は番組が凄まじいことになっていて、
能が夜討曽我、休憩はさんで一調で胡蝶、狂言の花子、もっかい休憩はさんで仕舞の富士太鼓に半能で石橋。
夜討曽我はシテが武田文志・宗典の従兄弟どうし、なところに、ツレが武田志房・宗和というシテそれぞれの親父どうし。間狂言が山本東次郎・則俊の兄弟、そして小書きに十番斬がついてて、後場は相手方がずらっと並んでの大立ち回り!
胡蝶は野村四郎さんと七拾七年会の小寺真佐人さんとの二人セッション。
花子(はなご、と読む)は1時間くらいある大曲の狂言。
仕舞で富士太鼓をやるのは宗家の観世清河寿さん!
石橋(しゃっきょう、と読む)は半能ながら、ワキをつとめられるのがワキ方下掛宝生流宗家の宝生閑さんで、ワキの口上のあとで武田宗典・文志のふたりが赤獅子・白獅子として舞まくるというド派手なもの。

ここまで書くだけでおなかいっぱい。。。

演目もさることながら、集まってるビッグネームっぷりがすごい。
(山本東次郎さんと宝生閑さんは国宝でもあらせられます。

今日はいつもの最初のワークショップ的なものはなく、馬場あき子さんが30分ほど七拾七年会についてや番組内容についての解説のお話。
この方、トークがとてもお上手で、引き込まれた。
のちほどの休憩のタイミングでご挨拶とお話をさせていただいたのだけど、「能評が昨今はさみしいので、もっと盛り上げていきたい」と仰っていた。
あと、自分に対しては

「とりあえず100曲観ろ、話はそれからだ」

と激励を^^;
まだ30曲弱じゃないかな、自分の能鑑賞歴は。。。ガンバリマス。


さて、夜討曽我。
十番斬小書きがあるので、後場のチャンバラに注目がいきがちだけど、前場もアツい曲。
仇討を決意したシテの兄弟ふたり。しかし故郷に残されることとなる母を思い、お付きのツレの兄弟ふたりに文と形見の品を届けさせようと考える。ツレのふたりもシテたちとともに討死することを望み、一緒にいくことを願い出るが、交渉叶わず、最後はシテたちの願いを聞き入れて去っていくのが前場。
今回、ツレ兄弟役に、シテ兄弟役(リアルには従兄弟)のふたりのそれぞれの実父を配役。まさしく一世代分先輩であり、またリアルに兄弟であるおふたりがツレとして華を添え、また、締める。

 シテ兄文志「お前たち、ワシの指示に従えるか?」
 ツレ兄志房「もちろんでございます」
 シテ兄文志「では、俺たちはいまから仇討するから、文と形見を故郷の母によろしく」
 ツレ兄志房「そんな!自分らも一緒にさせてください!」
 シテ兄文志「さっき言うこと聞くって言ったじゃねーか」
 客(そんな、ひどいwww)

 ツレ兄志房「どうしよう」
 ツレ弟宗和「もういっそうちらふたりで刺し違えて果てよう」
 シテ弟宗典「ちょwww待てって」

草生やして書いてみましたが、実際はとてもシリアスでアツい芝居。
とくに最後のツレふたりがシテたちの願いを聞き入れて去っていき、それをシテふたりが見送るシーン、まさしく今生の別れのところ。観てて目が潤んだ。
これはもう、観たもん勝ち。ウフフ。ニヤリ。

前場の後は間狂言のコミカル芝居。東次郎さん則俊さんの、こちらも兄弟によるやりとり。
会場の空気をスッと弛緩させてくれる。笑い声もけっこう漏れてた。
東次郎さんのワザを観るのは去年の宗和さんシテの屋島で小書き那須での間狂言以来。やはり、すごい。
芝居としては、この間狂言によってシテ兄弟の仇討が成就されたことが説明される。
芝居として見せるのがストーリー的には一番おいしいであろう仇討シーンではないのがポイント。

後場はまた一転シリアスに戻る。仇討後のお話。
ただ、十番斬なので、豪華というか、派手。橋掛かりに抜刀した敵がずらりと並ぶのはなんとも壮観。
ひとりずつ、またはたまにふたりが同時に鏡の間に侵入してきて、シテたちを討ち取らんと斬りあう。
シテふたりは順調に敵を倒していき、斬られた相手は「やられたぁ」アクションをして、その後さがっていく。前宙っぽく飛んで胡坐のカタチでドスンと床に着地するもの、仏倒れ(カラダをまっすぐ伸ばして背中からばったりと倒れる)など、ひとりひとり見応えがある果て方をしていく。
途中には橋掛かりに移動したシテ弟を追っての欄干越え(鏡の間から橋掛かりに向かってジャンプ)もあり、会場をどよめかせた。しくじったら客席に落ちるもんな、アレ。
その後、シテ兄はワキに刀を落とされ、いったんはワキがそのまま立ち去ろうとするところを「討ってくれ」と頼み、首を落とされて退場(演出としては烏帽子を落とす)。
シテ弟も一本背負いかましたりと暴れ続けるが、最後は縄にかかり、捕らえられたまま退場して終わる。

前場のシリアスな感情のぶつかり合い、間狂言の弛緩、後場の派手な立ち回りと、もうこれだけで今日は終わりにしてもいいメインディッシュっぷり。
すごいもの観ました。
あと、この夜討曽我では文志さんの実兄の友志さんが地謡の二列目一番左で入ってて、劇中、葛桶をしつらえたりシテから弓などを受け取ったりのフォロー役をされてて、こういうところの配役にも「いいなぁ」と思ったり。

DSC_6129DSC_6131

夜討曽我終わって20分休憩。
この休憩を使って、使ってみたかった食堂スペースへ。
観世能楽堂のリピーター客でも案外存在を知られていない、カフェが実は能楽堂の2階にあるのだ。
自分はホットケーキセット、嫁はハヤシライスとオレンジジュースを注文。少しハヤシライスを分けてもらった。
お値段は、まあ、そういうもんだよね。味はわるくなし。


休憩明けて、一調。
小寺真佐人さんが大御所野村四郎さんと対決、もとい一対一のセッション。
胡蝶の謡は自分も多少は聴き取れてたかな。真佐人さんの太鼓もしっかりしてて、うまくいっていたように感じました。
続けては、また大曲の狂言、花子。
「山の神」と恐れる奥さんに隠れて女に会いに行く旦那の話。
演じる山本則重さんは去年12月にご結婚(宗典さん結婚式の翌週だか翌々週だったらしい)という新婚さんで、そんな彼が浮気ものをやるというのも楽屋的に楽しいところ。
謡うは踊るわ盛りだくさんなんだけど、なにげに後見で入ったのが東次郎さんと則俊さんで、師の前であれはさぞかし緊張するのではなかろうか、と思った。邪推かな。
なんにせよ彼の狂言は上手くてとても好きで、今回もオチのところでキレイにすっころんでくれてて盛り上がった。

ここでふたたび休憩。
今度はロビーをうろついていろんな方とご挨拶。
で、隙を見て馬場あき子さんに突撃。^^;


最後。
まずは宗家の仕舞。
自分、清河寿さんの仕舞を観るのは2回目かな。落ち着いた安定感ある動きと感じる。
しっかし、すごい華の添えっぷりだ。七拾七年会の評価が高く、またこれからも期待されているということよね。
そして、石橋。
これはもう、正月のおめでたさ全開。
最初に一畳台がふたつ運び込まれ、舞台正面に並べられる。どちらにも派手な牡丹の飾りつけ付き(赤と白それぞれ)。
宝生閑さんが口上を述べ、すぐにワキに引っこみ、あとは獅子ふたりが出てきて派手に舞う。
とくに赤獅子の方の宗典さんが跳ぶはグルグルまわるはですごかった。
地謡もテンポよく勢いよく謡いあげる。
大小鼓、太鼓、笛のテンションも凄まじい。どっかんどっかん。
ちなみに七十七年会メンバーに笛だけはいないんだけど、この石橋の笛は藤田流現宗家の第十一代藤田六郎兵衛さん!いやはやもう。。。

スタートが十番斬で派手とはいえ、仇討というネガティブテーマだったのを、最後に華やかに正月らしく締めた感じ。

なんともゼイタクな午後半日でありました。

DSC_6133長かったですけどね。なにしろスタート13時半で終わったの18時だもん。
しっかり存分に愉しんだ。
あとで「あの時オレはライブで観てたんだぜ(I was there!!)」と自慢できるいい舞台。

そして、サヨナラ観世能楽堂。
銀座がどういうハコになるのか、これもまた楽しみだ。